すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。
(マタイ 11:28)
これは那須の林の中に入ってじっとしていた時、私の目の前で虫たちが演じてくれたものを書き下したものです。こうした森の中の散策は、2010年から2011年の東北大震災の前までよくしていました。震災が起こって、色々な被災者の方々とお会いしたり、被災地支援をされたボランティアの方々と一緒に働く機会を持つことになりましたが、こうした林の中に引きこもる時を持てたのは、私自身がまず慰められ、癒される必要があったのだと思います。–沢山の慰められる必要のある人達に会うことになる前に。
よく一日中、林の中にいましたが、林から出てくる頃には、心がよくリフレッシュされていました。
譲り合い (ひとしずく 142)
今日、散歩をしていると、小さなアザミの花に、小さな蜂とオレンジ色の小さな蝶が止まって蜜を吸っている場面が目に留まりました。
きっと神様が私の注意を惹いたのでしょう。しばらく眺めてみることにしました。
一つの花にとまった蜂と蝶は、お互いの頭をくっつけるように蜜を吸っています。お互い、独り占めしようと相手を追い払ったりせず、とても仲がいいように見えました。
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しばらくすると、オレンジ色の蝶のほうは、別の花を探し求めてか、ヒラヒラと飛び去って行きました。すると、今度はそこに黄色の蝶がやってきました。しかしこの蝶は、一生懸命に蜜を吸っている蜂を、邪魔しては悪いかなと思ってでもいるかのように、そのアザミの花には止まらずに、同じ株に咲いているもう一つのアザミの花に舞い降りました。
またしばらくすると、もう一匹の黄色い蝶がやってきて、この二つのアザミの花の周りを様子を見ながら飛んでいます。彼も蜜がほしいのでしょう。でも、花は二つ。
どうするのかな、と私の好奇心は高まりました。花に止まれない黄色い蝶は、しばらく彼らの間をヒラヒラと回り続けます。彼らは、何か私にはわからないお話をしているのでしょうか? たとえばこんな風に……
☆蜂― ここに来ていいよ。さっき、僕のすぐわきで、このお花からほかの(オレンジ色の)蝶君も吸ってったよ。君もどうぞ。今が旬だよ。
☆花の上 の蝶― どうぞ、よかったら、こちらの花の蜜を吸ってください。美味しいですよ。
☆蜂―いやいや、こっちにどうぞ。
☆空中を 舞っている蝶― ああ、ありがとう。お二人とも、親切だね。では私は、同じ蝶の仲間のところに降りようとしようか。
☆蜂― えーっ、遠慮しないでください。僕はもうたくさん吸いましたから、もう出発するんですから。どうぞ。こちらへ。
☆花の上の蝶― まあまあ、蜂さん、私の隣に、私の先輩を迎えさせてください。
☆空中を 舞っていた蝶― わかった。ありがとう、二人とも。あなたがたは何て親切なんだ。とにかく、どちらでもいいんだが、少し休ませてもらおう。
そんな会話がなされていたかどうかはわかりませんが、その蝶は、同じ蝶がとまっているアザミの花の上に止まりました。見ると、何とその羽は驚くほどボロボロです。初めから花に止まっていた蝶の羽はどこも欠けたところがありませんが、こちらは、もともとの羽の形がわからないほどになっていました。人間で言ったら、おじいちゃんになっていたのかもしれません。
羽がボロボロの蝶はすぐに立ち去りました。「君たち、ありがとう。君たちの親切でとっても元気づけられたよ。元気でね」とでも言っているように。
蜂は、まだ隣で蜜を吸っている蝶に言いました。
☆蜂―君って親切なんだね!
☆蝶― あなたこそ。さっきおなかいっぱいだなんて言ってたけど、まだおなかすいているんでしょ。こちらのお花はまだ蜜があるわよ。私はもう行くから、こっちから吸ったらいいわよ。
そしてこの蝶も飛び去って行き、蜂は、蝶がとまっていたアザミの花に飛び移って、吸い始めたのでした。
一匹の蜂と三匹の蝶と、二つのアザミの花の間に行われた五分ほどのパフォーマンスでしたが、彼らが一度もお互いを追い払ったりしないで、それぞれが蜜にありついている様子を見て、私は感心しました。
彼らはお互いに対して礼儀正しく、譲り合っているように見えました。決して「これは俺のもんだ!」といった欲ばり精神を、この小さなものたちは示しませんでした。
すごいな……。私は、人間関係についての尊い教訓を彼らから学んだように思えました。私たち人間も、この小さなものたちの譲り合いの精神、共存の精神を、お互いに対して示すなら、もっと平和で幸せな世界が築けるのではないかなと思いました。
どうか、平和の神があなたがた一同と共にいますように、アァメン。(ローマ15章33節)[/expand]
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